スポーツカー・・・・

続きです・・・・ロータスヨーロッパ、その2




W工場長のもとに発注したブレーキ部品が到着したのは、約一ヶ月後だったそうです。
その間にもちょくちょく工場を訪ねましたが、白いボディのロータスはうっすらと埃の積もった状態で
工場内に佇んでいました。すこし離れて眺めると自動車というより船舶に近い感じを受けました。
工場に修理・点検を待つ国産のクルマ、当時発売されたばかりのサニークーペなども、けっして不恰好なクルマではないのですが隣にあるヨーロッパと比べると腰高な印象は否めませんでした。

この入庫したロータスヨーロッパは、初期型のようで、FRP製の軽いエンジンフードを開けるとルノー製、1.5㍑エンジンが吊られていました。エンジン自体はコンパクトで上から覗き込むと工場の床が見えました。室内に座らせてもらうと太いサイドシルを跨いで腰を下ろしたシートはすっぽりと尻を包みこみ左手を自然に伸ばしたところに球形のシフトノブが有りました。シフトノブが生えているセンターはY字型のバックボーンフレームを抱えこむ為に、通常のクルマのそれより遥かに高い位置にある、そう・・大きなアームレストの中央にシフトノブがある、と言えばわかって貰えるでしょうか。

着座位置はわたしが乗ったことがあるどのクルマよりも低く左手を伸ばすと地面に手のひらが着く感覚です、もちろん先に述べた通り太いサイドシル…これも軽いFRPボディを強化する為でしょう・・が邪魔をして不可能ですが、そんな感覚です。

ロータスの修理が終了したのは、部品が到着してから3日後でした…
Wさんから連絡が入った事を知ったのは、わたしが勤務先へ戻った午後でした。
今のように携帯電話など無い時代でしたので、電話があったのを伝言メモに書いてありました。
早速電話を入れると「明日、ロータスをお客さんに引き渡すので見れるのは今日だけだよ」

生憎とWさんの工場には納品すべく部品はありませんでしたが、上司に「注文依頼を受けた部品番号に気になる個所があります・・・」とウソを言って工場へ向かいました。勿論電話で済むのは明白ですし、上司もロータスの件でわたしがWさんの工場に足げなく通うのは御存知でした。良い時代良い上司に感謝です。

工場に到着すると、既にピットから表に出されて洗車されたのかW工場長が拭きあげていました。
アイボリーとまではいえない白いボディはなんともいえない良い雰囲気です。
エンジンはかかっておりファンペルトの音が少し出ているようでした・・・
「一緒にベルトも注文すれば良かったかな・・・」と工場長・・・
ひととおり拭き取りを終え・・・・
「試運転に一回りしてこよう・・・オーナーさんには了解とってあるから、助手席に乗って!」
半ば強引に、助手席に座らされたわたしはW工場長の操るヨーロッパと共に走り出しました・・・
室内で聞くエンジン音は先程のベルトの音は気にならなくなっていました。
それより外装がFRPのせいかも知れませんがこもり音というか、エンジンの回転に呼応するようにウォンウォンとの反響する音が気になりました・・・・意外と図太い排気音のルノー製エンジンは、実用タイプらしく低回転でも機嫌を損なわずに空いた道路を走り続けています。
低い座面から眺める風景は普段通い慣れている工場前道路とは思えない程の別世界でした。
時間にして10分少々の短いタイムトリップでした・・・・

工場に戻り、オーナーさんが現われるまで再びピット内にて保管です・・・・

良い体験をさせて頂けました・・・・

その後もWさんとは何年かお付き合いをさせていただきましたが・・・
わたしが転職を機に自由な時間を取れなくなってから次第に疎遠になってしまいました。
出入りさせて貰っている時代から「オレのところで働かないか?」との有難い言葉もあったのですが、
ついにWさんの気持ちには応えて遣れませんでした。丁度、娘も生まれて保障のある働き場を求めているワタシには小さな町工場へ飛び込む勇気がなかったのですね・・・

数年後、Wさんが体調を崩し入院したと、知人を通じて知り病院へ見舞いに行きました。
長身で細身なWさんが更に痩せて痛々しい程でした・・・・
勤めていた工場は以前の整備仲間が切り盛りしているらしく一線を退いたWさんの寂しそうな顔が、
忘れられませんでした・・・
それでもわたしが見舞いに来てくれたことを本当に喜んでくれました・・・
サービスカウンターの下に日本酒・・・一升瓶を隠し、コップ酒をあおりながらクルマや整備のハナシをする豪快な姿は、そこにはありませんでした・・・・
この時、既に病魔はWさんの身体を蝕んでいたのでしょう・・・・
亡くなった、との訃報を聞いたのは見舞ってから二ヶ月にも満たない時期でした・・・
クルマの事を愛して、預けたお客さん以上に親身になって整備をしてくれたWさん・・・
叶わない事ですが、整備のいろはを一から教えていただきたかった・・

今年の秋で亡くなってから10年になります・・・・
1007を見たら何て評するでしょうね・・・・辛らつな言葉が返ってくるかも知れないですけれど・・
いつも最後の言葉は・・・「うん、でも、いいクルマだよ」


確か・・・ロータス・ヨーロッパのDVDがあった筈・・・・・
・・・・と、物置をゴソゴソと探して出てきたのが、コレです・・・・

以前、カーグラフィックと併せて購入していた「カーマガジン」ネコパブリッシング発行・・・・
カーグラより狭く深く・・・ディープな本です・・・・
付録です、試乗体験したヨーロッパとは全くの別モノ、ロータス47GT・・・
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レーシング・マシーンです・・・・
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コクピットは似ていますね・・・
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エンジンは全くの別モノ・・・こちらはツゥインカム・・・・
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思い出が蘇ってきます・・・・
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by boxycat | 2008-09-17 21:58 | 無題