15年前・・・




そいつはやって来た。








憧れて、憧れて・・・
やっと自分のモノにしたいと思った時、限定バージョンは完売していた・・・

行きつけのバイク屋サンで、
「部品として出るみたいですよ」

黒地にアイボリーに塗り分けられたタンクは黒×ダークシアングリーンという
限定で発売されたSの外装に換えられた。
職人がひとつひとつ手塗りでグラデーション塗装をしたとされている。
そしてその周りを囲む金色のラインは「一発貼り」と呼ばれる熟練工の手により
黒と緑の境目に置かれるように貼られるのだ。
サイドカバーも同じテーマのデザインだ。

定番のスーパートラップは4インチではなくて3インチのレゾネーター付を選んだ。
シートはWMの黒パイピングを発注したが手違いからか白パイピングが来た。
後方に行くにつれてなだらかにラインを描く白パイピングはそれはそれで気に入った。

ミクニのTMRはフロート室にRACING USE ONLY という小さなコーションシールと
ヨシムラの赤白ステッカーが貼ってあった。
40φに加速ポンプ付はオーバースペックかと懸念したが杞憂に終わった。
中速からの加速感は心地良い吸気音を伴い400とは思えない程だった。
気化器を交換するにあたってはスロットルワイヤーも交換しなければならない。
気化器は強制開閉式の名のとおりスロットルバルブを開ける方はもちろん
閉じる方もワイヤーにてコントロールするのだ。
いわゆる「2本引きワイヤー」だ。
ノーマルのCV(負圧)キャブが開ける方はワイヤーにてコントロールするが
閉じる方は自身のスプリングにて閉じられるのとは対照的だ。

キャブレターを交換してエンジンの性格は劇的に変化した。
当時の価格で5万円、決して安くはないが投資しただけの結果は出た。
それだけの金額を、今、ポンと出せるかというと・・・・
答えに窮する。

4回めの車検の時に、メッツラーからダンロップTT100に履き替えた。
GPというゴム質が柔らかいバージョンだ。
旋回中にフロントから滑り出すという不安感がなくなった。

車両価格の1/2くらいをカスタムにつぎ込んだ。
それだけ等価の満足感を得られたか?と問われれば・・・
間違いなく、そうだと答えることが出来る。
勿論、上を見れば限(きり)がないし方向性が変わってくれば金額も違ってくるだろう。
しかし私にとっての満足感は最上だったと答えられる。
休日の朝早く「ひとっ走り」するのは至上の時間だった。
所有する喜び、走る喜び、そして鑑賞(みる)、いじる喜びに満ち溢れていた15年だった。

しかし年を経るごとにノーマルに戻しつつあったのも事実だ。
いの一番に換えたのはマフラーだ。
平日の休み、心地良い排気音に呼応しながらシフト掻き上げつつ
小さな集落に差し掛かった時だ。
折りしも下校途中の小学生の集団5~6人が横断歩道を渡ろうとしていた。
当然の様に停止線で停止した私だった。
その中の何人かは両手を耳をあて塞いでいる格好をしながら歩道を渡っていた。
排気音がうるさい、のか!?
そうだろう・・・・
いくら気持ちの良い排気音、それはライダーが感じるだけであって一般の人達は
単なる騒音でしかないのだ。
ノーマルの排気量でキャブレターを換装する程度のカスタムでノーマルマフラーより
優れた性能を引き出すマフラーはあるのだろうか?
これを期に段々ノーマルに戻していった。



いまでも手放した事を後悔している・・・正直な気持ちだ。
もう大きいバイクを手にする事は難しいだろう。
夢はある・・・・しかし夢のままだろう。
夢を実現するには残り時間が少ないのも理由のひとつだ。

買い取ってくれたバイク屋さんは15年来のバイク屋サンの仲間だ。
いつものバイク屋の御主人はバイクの修理業に特化して営業しているのだ。
バイクの売れない時代であることは紛れもない現実だ。

良い次のオーナーに巡り会って欲しい等とは決して言わないし思いもしない。
15年としては少ない距離しか走ってやれなかった私だったが、マシンを思いやる気持ちは
誰にも負けない。
幸せであったと思うし、そう信じたい。
15年傍に居ただけで豊かな気持ちが続いていた。
たとえ乗れない雨の日でさえシートをかけられ佇んでいるシルエットは
言い様のない雰囲気を醸し出していた。
晴れた日は勿論だか小雪が舞う鉛色の空の元を走るのは気持ちが良かった。
学生時代のバイク通学の楽しさ辛さを思い出させてくれた。

ここまで書いた時にケイタイが鳴った。
バイク屋さんだ。
「振り込んで置きましたから」

もうSRこと二号機は、いないのだ。

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主のいないキーホルダー、バイク屋さんも当時はYSPの看板を揚げていた。
引き出しの奥深く仕舞っておこう・・・・
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by boxycat | 2011-08-26 20:50 | 2輪