楽しみにしていた・・・


春の遠足だった。






でも少しも嬉しくなかった。
あれほど頼んでいたグリコのキャラメル「アーモンドグリコ」が
リュックの中に入っていなかったからだ。
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仕事帰りに買ってくるから、と言っていた母が忘れたのだ。
ごめんね、と謝っている母に返事をしない、更には睨んで抗議した。

遠足は港近くの公園まで徒歩で行くのだ。
小学二年生の足で一時間は中途半端に長く遠かった。
隊列を組んでの徒歩は退屈だった。
少なくてもアーモンドグリコを食べる楽しみがなくなったワタシには。

いつの間にか、ふてくされ気味の小学生は隊列の最後部をタラタラ歩くのだった。
港の市場に差し掛かった頃、聞こえてきた。
トランペットだ。
何処だ?
小学生はひとり足を止めた。
どうやら倉庫の屋上から聞こえてくるようだった。
ませた小学生には聞き覚えのある旋律だった。

哀しいことも ないのに なぜか
涙がにじむ ウナセラディ東京
いけないヒトじゃないのに どうして
別れたのかしら ウナセラディ東京

歓楽街が近くにある港町には生バンドが出演するクラブが多かった。
夕方からの出演に備えて練習をしているのだろうか・・・
春霞の大気の中、倉庫群にトランペットの響きは染み入るように反響した。
ビブラートを抑えたメロディに忠実な演奏だった。
小学生は何故か涙が滲んできた。
母に謝りたいと思った。
仕事帰りが遅くスーパーが開いていなかったのを
理解してやれなかった子供の自分を恥じた。

遠足から走って帰ってきた小学生は非番の母に抱き付き泣いた。

勉強机の上にはアーモンドグリコが置いてあった。

ウン十年前の春の出来事だった。

Chris Botti(クリス・ボッティ)のトランペットは
その日を思い出させてくれるくらい似ているのです。

Chris Botti  「Cinema Paradiso」  yo-yo-maとのライブです。

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by boxycat | 2011-03-09 20:15 | 音楽(音がくぅー!)